2歳を迎える前の男の子が、「人参」と書かれた漢字カードを見て、元気よく答えてくれました。
続いて「玉葱」のカードを見せると、
さらに「林檎」のカードには、
と、次々に言葉が出てきました。
その姿に、そばにいた職員もびっくり。
毎日の取り組みが、子供の中に少しずつ積み重なっていたことを感じる、うれしい出来事でした。
かえでの樹保育園 板橋本町では、石井式漢字教育を取り入れ、毎日、漢字絵本の読み聞かせを行っています。
毎月一冊の絵本を決め、一か月間、繰り返し同じお話を楽しみます。
読み聞かせの後には、絵本に登場した言葉の漢字カードを見ながら、保育者の声に続いて、子供たちも一緒に声に出します。
同じ絵本を毎日読むと聞くと、大人は「飽きないのかな?」と思うかもしれません。
しかし、子供たちは繰り返しが大好きです。
初めは絵を眺めていた子供も、少しずつお話の流れを覚え、次の場面を楽しみにしたり、知っている言葉を一緒に口にしたりするようになります。
同じ絵本に繰り返し触れるからこそ、物語や絵、耳で聞く言葉、漢字の形が、子供の中で少しずつ結びついていくのです。
今回の男の子も、突然、何もないところから漢字を読めるようになったわけではありません。
子供たちは日々の生活の中で、本物の人参や玉葱、林檎を見たり、触れたり、食べたりしています。
そこに、絵本に描かれた野菜や果物、保育者から聞く「にんじん」という言葉、そして「人参」と書かれた漢字カードが重なっていきます。
- 本物の人参。
- 絵本に描かれた人参。
- 耳で聞く「にんじん」という音。
- 目で見る「人参」という文字。
それぞれが別々の知識として存在するのではなく、毎日の生活や読み聞かせを通して、子供の中で一つにつながっていきます。
今回の姿は、文字を一文字ずつ解読したというよりも、
「この形は、ぼくが知っている“にんじん”だ!」
と、実物と絵と言葉、そして文字が結びつき、自分から口に出せた瞬間だったのではないでしょうか。
石井式漢字教育というと、「小さな子供に漢字を覚えさせるの?」と思われることがあるかもしれません。
しかし、園で目指しているのは、子供にたくさんの漢字を暗記させることではありません。
読める漢字の数を増やしたり、覚えた数を比べたりすることでもありません。
私たちが暮らす社会は、ひらがなだけで表記されているわけではありません。
絵本や図鑑はもちろん、駅の案内、道路標識、お店の看板、商品の名前、地図やさまざまなお知らせなど、子供たちはこれから多くの場所で漢字に出会います。
だからこそ、漢字を初めから「難しいもの」「勉強しなければならないもの」として遠ざけるのではなく、幼い頃から絵本や生活の中で自然に目にする、身近な文字として親しんでほしいと考えています。
小さな子供は、文字を絵やマークを見るように、全体の形で捉えることができます。
「この漢字、見たことがある」
「これは、ぼくの知っているものだ」
「文字って面白い」
そんな気持ちが育つことが、これから広い文字の世界へ入っていくための、やさしい準備になります。
漢字に親しみ、知っている文字が少しずつ増えていくと、絵本や物語の中にも「分かる」が生まれます。
これまでは大人に読んでもらって楽しんでいた本の中に、見たことのある文字を見つける。
言葉の意味が分かり、物語の世界へ自分から入っていく。
そうした喜びは、
- 「もっと見たい」
- 「もっと知りたい」
- 「自分でも読んでみたい」
という気持ちにつながっていきます。
漢字を覚えること自体が、石井式漢字教育のゴールではありません。
漢字を難しいものとして遠ざけず、文字や言葉を面白いと感じること。
本に親しみ、読むことを好きになること。
そして、身の回りにある文字に気づき、「これは何だろう」「もっと知りたい」と、社会や世界への関心を広げていくこと。
漢字に親しむ経験は、子供たちが自分の力で本を読み、身の回りのことを理解し、世界を知っていくための土台になります。
もちろん、声に出す時期や興味を持つものは、一人ひとり異なります。
大きな声で復唱する子供もいれば、じっとカードを見つめながら、心の中に言葉を蓄えている子供もいます。
どちらも大切な育ちの姿です。
これからも、毎日の読み聞かせや生活の中でのさまざまな体験を通して、子供たちの中で「実物」「絵」「言葉」「文字」が豊かにつながっていくように。
そして、漢字との楽しい出会いが、本への興味や社会への関心へと広がり、子供たちが自分の力で世界を知っていくための土台となるよう、一人ひとりの成長を温かく見守っていきたいと思います。

